大好きなはずなのに

先日、友達が伝えてくれた言葉が脳裏によぎった。

『日下部くんも芹那のことが好きみたいだよ』

その言葉に、背筋が凍りついたのを覚えている。

別に友達を責めているわけではない。

友達は、まるで当たり前かのように私の恋を応援する気持ちも分かる。

実際、私もその友達の恋を応援している。

だけど、その言葉は知りたくなかった。

普通の人は、両想いになれたことに物凄く喜ぶのに、私はそうじゃない。

だから、ふと思うことがある。

私の恋は、偽りの恋なんじゃないかって。

やっぱり、私には“追われる”より、“追いかける”ほうが合っているのかなって。

でも、彼が好きなのは事実。

周りから彼のこと好きかと聞かれたら、好きだと答えられる自信もある。

でも、彼のこと全部を含めて愛しているかと聞かれたら、私は即答できない。

別に、透に嫌いな面があるとかじゃない。

ただ‥‥‥。

私が生理的に受け付けられないだけ。

こんなこと思うのは最低だと自分でも分かってはいる。

私が普通の心を持った人間ならば、彼と結ばれたらどんなに幸せなんだろうと何度も頭を悩ませた。

その度に、消えてはくれない醜い感情。

どうして‥‥‥?

私は、こんな感情を抱いてしまうのだろう。

どんなに答えを探しても導き出せることができないまま、彼と約束した日曜日が来た。
< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop