トメイト🍅ポテイト🍟

12月②

僕はもう一度シャワーを浴びアルバイトの支度をはじめた。

僕は家庭教師のアルバイトをしていた。

今日は中学3年生の受験を間近にした生徒だった。

彼女は平均的に見てもあまり成績が良い方だとは言えなかった。

むしろ学年では下から10位以内だった。

僕は一度父親と母親、バイト先に相談した。

給料をもらっている以上、このままではいくらアルバイトの僕とは言え他のアルバイトを雇った方がいいのではないかと。

ましてや12月だ。

普通の受験生なら追い込みをかけている。

しかし彼女の両親は安い給料のわりに責任が大きくて大変だろうから、バイト先からの給料とは別にお金を支払うと言った。

僕は断った。

彼女の事を思って言っているのだと説明したが、伝わらなかった。

彼女は一生懸命に勉強をした。

僕が話している意味がわからない時もあれば、反対に彼女が言っている意味を僕が理解できない時もあった。

それでも彼女は真面目に僕の授業を受けてくれた。

僕の性格上たまに冗談を挟みながら話すと彼女は笑ってくれた。

彼女は中学校で吹奏楽部に入っていた。

夏休みのコンクールを観に来て欲しいとのことだったので行ったこともある。

彼女は少し変わっているところがあるように思えた。

僕だけがそう思っていたのかもしれない。

彼女はサックスを担当していた。

みんなが楽譜を見ながら演奏をしている中、彼女は時折楽譜にはないアレンジをした。

しかし指揮者も周りの演奏者もそれを指摘することはなかった。

それはまるで初めから決まっていたかのように自然と溶け込んでいたのだ。

彼女も意識しているというよりは無意識にそうなっているのだろう。

受賞すらしなかったものの、僕は彼女のグループが1番好きだった。

才能とは磨き上げられるものもあれば、生まれもったものもあると教えてくれた。

思春期の彼女を傷つけないように僕は両親とアルバイト先に相談していたのだ。
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