甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜

***

 その日の午後7時過ぎ。
 室長から頼まれていた資料作成もひと段落したので、わたしは帰宅の準備をはじめた。

 島内さんはまだ出先から帰ってきていなかった。
 いったいどれだけの数の店舗を回っているんだろう。

「お先に失礼します」
「おつかれ」
 残っていた橋本さんに声をかけ、廊下に出ると、帰ってきた島内さんに出くわした。

「お、植田さん。いやあ疲れた。スポーツ用品店ってどこも広いからさ。全部で3万歩ぐらい歩いたよ。今、帰るところ?」
「はい」
「室長は?」
「専務に呼ばれて席を外されてます」
「じゃあ、たぶん長くなるな。報告は明日にしよう。植田さん、良ければちょっとだけ待っててくれるかな。俺もすぐ帰るから」

 頭上からそそがれる期待のまなざし。
 で、つい、頷いてしまう。

「わかりました。ここで待ってますね」
「本当? じゃあ速攻で戻るから」
 島内さんはオフィスに入っていった。
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