甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 中から橋本さんと島内さんの声が聞こえてきた。

 さっきの「3万歩歩いた」というくだりを、橋本さんにも披露しているみたいだ。
 楽しそうに笑う橋本さんの声を聞いて、かすかに胸がざわついた。

 仲、良さそう。
 島内さんと橋本さん。

「お待たせ、行こうか」
 わたしはドアの向こうで手を振っている橋本さんに軽く会釈を返した。
 彼女は手を振って答えてくれた。


 外はもう暗くなっていたけれど、昼間の暑さの名残でまだ蒸し蒸ししていた。

「だいぶ勝手が違うだろ? 総務と」
 駅に向かう途中、話は仕事のことに終始した。
「ええ、そうですね」
「みんな、書類作成とかファイリングとかコピーとか、何から何まで植田さんに頼むんだから、大変だな。でも、植田さん、すごいよ。何でも、あっという間にこなしちゃうんだから」

< 104 / 164 >

この作品をシェア

pagetop