甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜

「そんなことはないですけれど。皆さんが的確に指示を出してくださるので、仕事はしやすいですよ」

「困ったことがあったら、いつでも言ってよ」
「ありがとうございます」

「とにかく、俺は先週までとぜんぜん気分が違うよ。植田さんの顔見たら、仕事の疲れがいっぺんで吹き飛ぶ」

　そう言って、目を細めて、微笑みかける島内さん。
　　
「キャッ」
　彼の言葉と表情に気を取られていたわたしは、歩道と車道のあいだの段差につまずいて、転びそうになった。

　とっさに島内さんがわたしの肩に手を回して支えてくれた。
「おっと、大丈夫？」

　そう言って、覗き込んでくる。
　至近距離で目が合う。
　彼の前髪がはらりと額にかかった。

　それが引き金になって、心臓が痛いほど高鳴って、いたたまれない心地が襲ってきて……