甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 ふーっと大きく息をつくわたしを、島内さんはじっと見つめる。

「植田さん」
「は、はい?」
「今度はこっちからの質問に答えて。急に合宿行けなくなったのは、なんで?」
「そ、それは……その」
「その?」
「えっと」
「もしかして、妬いてくれたってこと? 俺が橋本さんと付き合っていると思って」

 彼は身体を起こした。
 でも腕を組んだままで、それ以上、わたしに近寄ろうとはしなかった。
 ただ熱のこもった視線でじっと見つめるだけで。

「今すぐ、本心を教えて。じゃなきゃ……」
 まるで痛みに耐えているかのように眉根を寄せて、彼は続けた。

「身悶えするほどきみを抱きしめたいのに、出来ないんだ。あの朝、決めたんだよ。植田さんと心が通じ合うまで、あの夜みたいなことは一切しないって」

「島内さん……」

 この人はそうやって、ずっと待っていてくれたんだ。
 わたしの気持ちが変わるまで、辛抱強く……

 でも、なんで……そこまでして、わたしなんかに。
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