甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 もし彼の言葉を真にうけて、食事に行ったりしたら「あの堅物も結構チョロい」なんて、武勇伝のひとつに加えられるのがオチ。

 そんなふうに陰で揶揄されるのはごめんだと思っていた。

 でも、今日は……

 落ち込みが極限まで行って、なかばヤケになっていた。
 それに、もうひとつ理由があった。
 一度食事に付き合えば、もう誘ってこなくなるだろうと思ったのだ。

 島内さん、意地になっているんじゃないかな。
 いつも断わられて。
 きっと彼も気づくはず。
 話してみたら、わたしみたいな、無味乾燥なつまらない女に、なんで長いあいだ、声をかけ続けたのか不思議に思うに違いない。

 長年、付き合ってきた恋人にあっさり振られてしまうような……まったく価値のない女なのに。
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