甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜

　はじめはどうなることかと思ったけれど、話題が豊富な彼との食事は楽しかった。
　こわばっていたわたしの心も少しずつほどけていった。

　とはいえ、話していたのは９割がた彼のほう。
　わたしはただ相槌を打っていただけ。
　食事が進み、２杯目のワインを飲みはじめたころには酔いが回ったのか、また悲しみが押し寄せてきて、わたしの口数はさらに減った。

　それなのに島内さんは不機嫌になることもなく、でもさりげなく、わたしの気持ちを盛り立てようとする気遣いをみせてくれる。

　この人、本当に大人だ。
　身のこなしはスマートで、落ち着いているし。
　思った以上に素敵な人。
　はじめて長時間一緒に過ごして、わたしの島内さんに対する認識は変わった。
　軽薄、というのはわたしの勝手な先入観だとわかった。

　でも……
　ふっと気を抜くと、どうして隣にいるのが裕樹じゃないんだろうと考えてしまう自分もいた。