甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 彼氏持ちかあ……
 そうだよな。男がほっておくわけないか。
 あんな、たおやかな雰囲気の美女、今どき希少価値だし。

 で、諦めようと他の女の子と付き合ってみたりもしたけれど、彼女以上の人とは出会えなかった。

 俺は植田さんに声をかけ続けた。 断られるのはわかった上で。

 だから、3日前の夜は4年越しに望みが叶って、完全に舞い上がってしまった。

 東京タワーが見えるラウンジで、彼氏と別れた理由を聞いているあいだ、身勝手な相手の男に、腹が立って仕方がなかった。
 ずっと不眠が続いているという彼女を寝かせてやりたかった。
 一方的に男に捨てられて寂しい思いをしてる彼女を、とにかく抱きしめて甘やかしたかった。

 そのためだったら軽蔑されてもいい。
 そのときは本気でそう思った。

 自分の内のどこを探しても、この機会に乗じて、手籠めにしようなんて気はさらさらなかった。
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