甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
第1章 差し伸べられた手
〈side Natuki〉

 その日の朝

 まぶしい……
 地下鉄の駅から地上に出ると、外は目がくらむほどの陽光に満ちていた。
 3月初旬。空気はまだまだ冷たいけれど、柔らかい陽ざしはすでに春の気配を感じさせる。

 空は青く澄み、風もおだやか。
 でも、今のわたしには好天はなぐさめどころか、憂鬱な気分にいっそう拍車をかけるだけ。

 明日はやっと土曜日。
 この一週間は本当に長かった。
 うとうとしても、すぐ目が覚めてしまう日が続き、慢性の寝不足状態。
 それがもう、ひと月あまり続いている。

 ちゃんと眠れるようにならないと、仕事に支障をきたしそうで怖い。
 週明けに有給を取って、近くの心療内科を受診しようかと考えているところだった。
 
 勤めている会社は、大正年間に創業した大手繊維メーカー。
 わたしはその総務部に所属している。
 
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