甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 うーん、とはいえ……
 いざ、島内さんを目の前にしたら、どんな顔をしてどんなことを話せばいいのかわからない。
 「助かりました」って言うのもなんだか変だし。
 できることなら、ほとぼりが冷めるまで会いたくないなあ。

 そう思っていた矢先。
 デスクの上に置かれていたメモに気づいた。

――連絡ください。名刺の件で
 第一営業部第二法人課 島内

 〝島内〟という文字を目にしただけでどきんと胸が高鳴った。

「ねえ、これ書いてくれたの、小早川さん?」
 わたしは隣の席の同僚に声をかけた。

「えっ、あ、そうそう。この人が昨日、尋ねてきたんだよ。頼んでた名刺、まだできてないかって」
「えーと、今日届くんだったかな」
 名刺なんて頼まれた覚えは、もちろんない。

「なんか急ぎだったみたいだぞ。業者を教えてくれたら自分で取りに行きますとか言ってたよ」
「ありがとう。とりあえず連絡してみる」
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