甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 彼はふーっと息を吐き、姿勢を正した。
「あらためて言うよ。植田さん、俺と付き合ってくれないか」

 世の中のほとんどの人が、この人に告白されて断るなんてありえない、と思うんだろうな。
 でも……

「ごめんなさい。付き合えません」
「やっぱり嘘だと思ってる?」
 わたしは左右に首を振った。 
「じゃあ――」

 彼の言葉を遮って、わたしは言った。
「まだとても、そんな心境になれなくて。また、うまく行かなくなったらと思うと。……耐えられる自信がないし。今はもう、恋愛はしたくないんです」
< 60 / 164 >

この作品をシェア

pagetop