甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 ひとりになった部屋で深呼吸をして、それから総務のときからの習慣で、共有スペースのテーブルの拭き掃除を始めた。

 すると「おお、早いね」との声。
 室長だった。

 わたしは掃除を中断して挨拶した。

「おはようございます。総務からこちらに来るように言われました植田です。よろしくお願いします」
「植田……奈月さんだね。水野から聞いてる。室長の大堂です。よろしく」

 大堂室長は第一営業部の課長をされていた方。
 たしか、まだ40歳にもなっていないはず。
 その若さで、新規ブランドの責任者に抜擢されるのだから、将来の幹部候補ということなのだろう。
 
 ちなみに、彼は女子人気も高い。
 渋い年上男性が好み、という女子社員たちが憧れているという話を、何度か耳にしたことがある。
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