甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 大堂室長は笑って島内さんの肩を叩いた。
「植田さん、さっきのは室長の冗談だから本気にしないでよ」

「おっ、やけに焦ってるな、いつもは俺がからかっても受け流す島内が。珍しい」
 彼らのやり取りに今度はわたしが苦笑しながら、自席についた。

 そして始業5分前までに、残りのふたりも出社してきた。

 ひとりは多田修さん。
 企画部の開発担当若手NO.1と目されている人。
 メタルフレームの眼鏡が知的な印象だ。
 彼もやはり女子人気が高いほう。

「光栄だな。総務のマドンナと一緒に仕事することになって」

 彼はそう言って、手を伸ばして握手を求めてきた。

「えっ? マドンナって?」
「自分がどう呼ばれているか知らなかった? まあ、そこがマドンナのマドンナたる所以だろうけど」
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