甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 そんなあだ名、まったくの初耳だったので、わたしは曖昧な表情で受け流した。

 すると島内さんが口をはさんだ。
「何、挨拶にかこつけて口説いてるんですか」
「するか。お前じゃないんだから」
「俺は見境なく声をかけたりしませんよ。多田さんみたいに」

「こら。初日から何、ごちゃごちゃもめてるんだ? そろそろ打ち合わせを始めるぞ」
 室長がわたしたちに声をかけたとき、同時に最後のひとりが入室してきた。

「おお、わが社のイケメントップ3が集結してるじゃない。なかなか壮観ねえ」

 橋本郁美さんだ。
 そんなことを言っている彼女自身、とても美しい人だった。

 企画部でマーケティングを担当されていた。
 歳はたぶん30代前半。
 ロイヤルブルーのノースリーブのパンツスーツがとても素敵。ショートボブの髪型によく似合っている。

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