黒曜の戦場
「ガキはくそ生意気でいい」
ちゃんと噛んでいるのだろうか、というくらいに噛む回数が少ないまま吸い込まれていくおにぎりに、私はお茶も持ってくるべきだったと密かに後悔していた。
あまりの食いっぷりに、だいぶどうでもいいことを考えているかもしれない。
「ガキはくそ生意気に欲張って、蹴躓《けつまず》いて、痛い目見ながら学んでいきゃいい。人の態度に振り回されることに慣れんじゃねぇよ」
そっと静かに、未夜くんの奥にいる彼の瞳に視線を合わせる。
今初めて、ちゃんと目を合わせたかもしれない。
ガキって……いおりさんだってそんなに、歳変わらないくらい、なはず、なのに。
『人の態度に振り回されることに慣れんじゃねぇよ』
すっと心に染み込んで溶けた、柔らかな言葉。
「もう一回言われたいか?テメェの態度がうぜェっつってんだよ」
「……」
「上に来んなら尚更改めろ。ココはクリエイターの世界だ、頭硬くちゃいいもん浮べやしねぇんだよ。咲がココ仕切ってっから必要以上にビビることもねぇ」