黒曜の戦場
「妄想力豊かなメスが、男の免疫も持ってないままワラワラと興味本位に集って来やがって」
説明の仕方が酷すぎるけれど、何となく想像出来てしまうのがまた……うん。
「俺はそのまま、美術部に咲を置いて逃げた」
「咲くん乙《おつ》」
その時の収穫がコレだ、と見せてくれた紙は絵のコピーで。
咲くんが片膝を抱えて椅子に座って微笑むポーズが色んな角度から描かれていた。
どうやら勧誘しに行ったはずが、彼女達のエサになってきたらしい。
え、それはちょっと私も混ざってみたかった。
もちろん描く方で。
「あれ以来もう、美術部員には近付きたくねぇ」
憂いを帯びた瞳を床に向け、はぁとため息をつくいおりさん。
いや、あなた逃げたじゃないですか……と追い込むわけにもいかず。
それ程までに怖い思いをしてきたみたいだ、なむなむしておこう。
私は彼に両手を合わせた。ちーん。
「琥珀、もういい?」
くいくい、私の七分丈の袖をつまむ未夜くんに、目を合わせる。
うん?
「おなかすいた」
「そうでした」
私たちはまだ、お昼ご飯を食べていなかったのだ。