黒曜の戦場


そんなことにも気付いていない未夜くんは、「服……?」なんて戸惑いの声を上げている。



「これは雨林の服だから。そこのベッドのある部屋に置いてあるんだよ」

「雨林さんの……?」



なぜ雨林さんの服を、未夜くんが???

びろーんと裾を伸ばして服を見る未夜くんに……ちょ、ちょ、胸筋まで見えちゃいそうだよ、ダメだよダメダメっ!!

琥珀ちゃんはほっぺを真っ赤にして顔を覆い、指の隙間からちらり。

未夜くんは慌てることも無く、すぐに服を引っ張る手を緩めた。

もう片方の手には、昨日と同じように握られたゲーム機がある。



そういえば未夜くんて、雨林さんだけ『リンちゃん』と親しげに呼んでいたような気がする。

仲良しなのでしょうか?

そしたら琥珀ちゃんはちょっとジェラシーとやらを感じてしまいます。むっ。



「リンちゃんの服、安心するから」

「……安心?」

「うん」



そ、そんな、彼シャツを着ているような女の子みたいな理由だと反応に困ってしまうのですがっ!!

琥珀は口を両手で隠してあわあわとする。

決してニヤニヤを隠しているわけではないぞっ。



咲くんが未夜くんの襟元を直しながら、教えてくれる。

あ、いいお兄さんみたいだ。



「簡単に説明すると、未夜は雨林のいとこ。で、今ここに住んでるの」

「………………???」

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