黒曜の戦場
私で、未夜くんが釣れてしまった。
ドキーンと大きく心臓が鳴る。
え、いま、未夜くん……ここ入るって言ったの……!?
不良じゃないけど大丈夫……!!?(今更)
「未夜も入る?大歓迎だよ」
にっこりと笑う咲くんの笑顔に、逆に裏が有りそうで怖い。
「ちなみに……抜ける時にフルボッコ食らうとかいうのは……ありませんよね?」
恐る恐る、その中途半端にどこかから聞いたような知識を尋ねる。
場合によっては私はここから逃げないといけない。
「ここ、族じゃないからね。ただ行き場がない子たちのたまり場だから、そういうのはないよ」
「……それは安心した、けど」
「けど?」
「黒曜に入ったら何か、今までと変わったりします?」
身の安全は保証された、恐らく。
話を聞いて希望に応えてくれる咲くんがいるなら、大丈夫だとは思うけれど。
結局、黒曜が溜まり場で、二階で漫画描いてる事くらいしかわからない。
「そうだなぁ」
ふわりと私の頭を撫でられると、その紫の透けた黒髪の奥から覗く瞳に捕らわれる。
まさに、黒曜石のような、鋭くて美しい瞳。
「騒がしくて仲間意識の強いたくさんメンバーと、仲良しになれるよ」
彼は目を細めて、そう甘く応えてくれた。
「ようこそ、黒曜へ。俺たちの女神さま」
耳の奥で反芻する、甘やかな響き。
頬に添えられたその指先に、私も手を添えて目を瞑った。
私はこの日、正式に黒曜のメンバーに加わったのだ。