黒曜の戦場
描けなくなってから最初に、琥珀を描こうとしました。
私の名前、琥珀という名前のくせに、『琥珀』を描いたことはなかったから。
でももう、それも色あせて見えて、透明感が納得できるように表現出来なくて。
くすむ琥珀色に、完成させることを拒否した。
「絵を描き続けることって、難しいんです。言葉には出来ない難しさがあるのです」
描きたい時に、好きなように筆が乗っていた頃には、考えもしなかった。
簡単とか難しいとか、そんなものはなくて。
『楽しい』か、『美しい』か、『熱中できる』か。
そうやって一点集中してきた私に『描けない』が訪れるようになるなんて、思ったこともなかった。
気付いたら私の手の中に残っているものは、ごっそりと無くなっていて。
それが酷く怖くなって、そんな現実は見ていたくなくて。
「ここ三日、琥珀ちゃんはずっと考えていました」
ちゃらんぽらんな、すっかすかな頭の中で。
普段は何も考えていないような、ぽわぽわとした頭の中で。
それでも、私の『好き』を取り戻す為に、何か出来るのだろうか?って。
「咲くんが、どう思って私のことをアシスタントとして迎えてくれたのかは、わかりません」
「うん」