黒曜の戦場


「でも、でも私は、ここで『好き』を集めて行ったら、また自由に楽しんで描けるようになるんじゃないかと……期待してしまっています」



初めての画材に触れた。

初めての技術に触れた。

初めての『共同制作』に携わった。



そこに琥珀は、強い高揚感を覚えました。



使い放題と言ってくれた画材たち、まだ使い方もわからないものばかり。

それは私の知らなかった世界で。

私の初めて見る世界で……。



「勝手ながら、期待に胸がるんるんとしてしまうんです」



初日、恐怖と喜びを交えて、布団の中で涙を零しながら眠った。

少し寝不足になってしまった。

倒れた青髪くんの心配もして、ラベンダーのアイマスクを引っ張り出してきた。



けれどやっぱり、私はちゃんと絵が好きなんじゃないかと、黒曜に行って希望が持てたのだ。

だってあの空間は静かなのに、みんなの熱意が強く伝わって来ていたから。



ほろりと落ちていく雫を、咲くんが指先で拭ってくれる。

面倒をかけて申し訳ない。ずずっ。

話すつもりなんてなかったのに、話し始めてしまえば止まらなかった。



小さな小さな琥珀ちゃんの、大きく大きく穴の空いた悩み事。

両親も腫れ物を扱うかのように触れてこなくて。
< 141 / 505 >

この作品をシェア

pagetop