黒曜の戦場
「俺の話も、聞いてくれる?」
「も、もちろん」
琥珀が先にたくさん聞いてもらったんだから、次は咲くんの話を聞く番なのだと、張り切って身構えていると、またくすっと綺麗に笑われてしまった。
咲くんは私を見てよく笑うなぁ。
「俺もお話をつくる人で、商業用にも創ってるでしょう?たまにおもしろいかつまらないかわからなくなることがある」
「……それも、すらんぷ、です?」
「んー……いや、同じ表現を読み直していると、最初はいいと思っていた表現が、読み返しを重ねる毎に慣れてくるんだよ」
「うむ?」
「すごく泣ける映画も10回20回と見てると展開に慣れて、泣かなくなる。それに近いようなことが起きてて」
「表現に慣れると……面白みがわからなくなっていくってことですか?」
「そういうこと」
あんな……クラスの男子が腹抱えて笑うような漫画でも……!!?
「人ってすぐに慣れるものなんだよ。適応能力ないと生きていけないから。でもそれが芸術となると裏目に出ちゃうんだけど」
「えぇ!!なんかすごくもったいない気がします!!」
「そういう時、どうすればいいと思う?」