黒曜の戦場
他人の目があって、初めてわかることも、あるのだろうか。
「咲くんは……私が創ったものも見てくれますか……?」
芸術とは、見る人感じる人によって、評価が大きく変わるものだ。
例えば幼児が描いた歪な丸が集まった顔も、親から見れば本心から上手に描けたと思えるように。
美しいオブジェも、道行く人の視界にすら入らないように。
文章の集まりでしかないものが、壮大な物語を描くように。
見る人によって、その価値が天と地ほど変わるのが芸術だ。
興味のない人には、いくら思い入れのある作品でも、退屈に感じてしまう。
それを私は、痛いほど知っている。
「もちろん俺も見たいし、いおり辺りならすごく興味持ってくれるんじゃないかな」
「いおりさん、にも……?」
「アイツも俺も、クリエイター側だからね。作品創りの難しさや力を入れた所なんかにも興味深々になるよ」
緩やかにブレーキをかけられる車、見慣れた家の近く。
もう、家に着いてしまったようだ。
「だから、今度一緒に見よう」
「……ちょっと、まだ怖いです」
「俺がいるから大丈夫でしょ」