黒曜の戦場
そのせいで美術部からの勧誘は凄まじい勢いだったのだけれど、私はそこでみんなとわちゃわちゃ描いていく気はなくて。
結局どこの部活にも属していない。
ていうか咲くんがモデルにされたのって、あの美術部員たちのところだったってことか。
ちっ、羨ましいぜっ!!
「じゃあ私が絡まれていて、助けてくれてた時には既に……?」
私を知っていたってこと……?
「うん、思わずお持ち帰りしちゃった」
おもちかえり……なのだろうか、あれは?
けれどそんな咲くんの紛らわしい言葉遣いに、教室がまたざわつき出す。
まって、今の発言はちょっぴり、ちょっぴりばかし修正したい所が──。
と思っている私の横を、雨林さんに俵担ぎされた未夜くんが通り過ぎていく。
もう一度言おう。
雨林さんに俵担ぎされて教室を出ていく未夜くん。
そして私にチワワのような瞳で訴えてくる未夜くんと、どんどん距離が開いていく。
「未夜の回収に来ただけだから。お邪魔しちゃってごめんね?」
「……え、は、はぃ」
「じゃあまた」
バイバイ、と手を振って雨林さんに続いて教室を離れていく咲くん。
残ったのは教室中の注目を集めてしまった、か弱いか弱い琥珀ちゃん。