黒曜の戦場
私の頭の中では可愛い豚ちゃんがブヒブヒ、脳内を占めている。
なんとも言えない顔になっていることだろう。
「キモ。何その顔、状況わかってんの?」
「現実逃避してるんじゃない?」
「現実逃避に不細工な顔ってするもんなの?」
「お頭《つむ》が弱くて状況が理解出来てないのかしら?」
やばい、豚のこと考えてたら、目の前の三人も豚に見えて来た。
琥珀ちゃんの妄想力が火を噴くぜ!!!
でも助けて!!ごめんなさい!!!!
「なんか言ったらどうなの?」
「さっき黙れって……」
「ウゼェな黙れ」
理不尽が酷い!!ぱわはらだ!!ぱわはら!!!!
だぶるばいんどだ!!!!
その時、「プフッ」と、息が抜けるような音が、この体育倉庫の奥から聞こえて来て、四人とも息を詰めた。
そこで動きを見せるのは、鼻から垂れた琥珀ちゃんの鼻血だけである。
後で体操服を洗わなければ琥珀ママに怒られてしまいそうだ。
四人の会話が止まったことに気付いたのか、奥からは「はぁー」と長い溜め息が聞こえて、ははっと笑った。
男の人の声だ……というか、このかすれたようなハスキーボイスには覚えがあるような気が――。