黒曜の戦場


「なに、喰われ待ち?」

「ひっ……」



彼女たちはいおりさんが顔を見せた時から声を発しないで、ガタガタと震えている。

まぁその気持ちはよくわかる、私もついこの間まで彼を見て奥歯ガタガタ膝をプルプルさせていたのだから。うんうん。



「というかいおりさん、私のこと覚えられたんですね」

「あ?こ……こくう?こかこー……ちげぇ、こくよ……こくとう?」

「琥珀ちゃんですっ!!!!」



名前!!全然!!まだ覚えてらっしゃらなかった!!!!

何度目の自己紹介だろうか!!!

か行ということだけは覚えてらっしゃったようだけれど!!



途中でコーラとか言いそうになったでしょう!?

琥珀ちゃんはそんなに甘味を極めてはいません!!

無味です!!

石です!!!

樹液の化石です!!!



「あー、そうだそうだ。石のな。で?うちの琥珀になんか用?」

「……あ、その」

「未夜?と、咲か。なに、お前ら相手してもらえると思ってんの?」

「い、いえ、そんな……」

「まぁチクるから関係ねぇよな、もう」



チクる?

そういおりさんが呟いた後の三人の慌てぶりといえば、悪いけど面白かった。

三人の両手が目の前で高速でぶんぶんと揺れているのだ。
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