黒曜の戦場
「そっか、みっちょん美術部だもんね」
「んー、あの日は珍しくテンション上がったわぁ。石膏と違って生身で日本人の少年で、その辺には簡単に転がってないようなイケメンの全身を360°好きな位置から描ける機会なんかそうそうないんだから」
「あぁ、あの時話してたの咲くんのことだったのか……」
「被写体としては最っ高」
ゆらり、視線を咲くんへと向けるみっちょんに、ニコニコしながらもビクッと体を硬直させる咲くんは、どうやらだいぶトラウマになっている様子。
例の、アシスタント出来そうな人を探して美術部に行ったけど怖い思いして帰って来た時のことだろう。
その美術部の一員がこの満巴ちゃんである。
黒曜をまとめ上げている咲くんにも怖いものはあるんだなぁ。
「ていうかみっちょん、いおりさんのこと怖くないの?」
さっきオレンジ頭とか言ってたし、不良すらもガタガタ震わすいおりさんが目の前にいようとも、普通にパンをもぐもぐしている。
「小学校一緒なの。えーっと、腐れ縁?空気のようなもんでしょ」
「空気って……」
つまりは存在自体に慣れているということだろうか?