黒曜の戦場


なんで咲くんはそんなに平気そうなの……!!?

琥珀の頭の中では今、ワニさん達をピコピコハンマーで片っ端から叩いて平静を取り戻そうとしているよ!!!



「ミツハも来とく?」

「……なんでそうなるのよ」

「じゃあ俺が行ってやるよ」

「来んなバカっ!クソヤンキー!!」



とは言うものの、いおりさんの気配が離れていってからみっちょんの声は静かになった。

頭から抱きしめられて目の前が真っ暗の私には、何も見えない。



ふと、咲くんの喉元が動き、低い声が直に響く。

あ……喉仏って動くんだ……。



「彼女と……その友達に、害の及ぶようなことをしたら」



静かに響く、いつもとは違う凛とした声色。



「すぐにわかるから。俺たちのこと、怒らせないように、ね」



そう言うと、ゆっくりと距離を開く咲くんにようやく解放された頭で、不安げに見上げる。

なにか、怒っているのかな……?そう思って。



ふと、額に触れる柔らかな温もりに、再び琥珀ちゃんの頭の中は真っ白になった。

完全に気を抜いていたので、一瞬なにがそこに当たったのかよくわからなくて。

額から離れていく顔に、ようやく事態の重大性に気付いた。
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