黒曜の戦場
『気まぐれなもんなのよ。琥珀が悪いわけでも無ければ、他の誰かが悪い訳でもない。スッと家出してはいつの間にか戻ってくるような、そんなものなのよ、感性って』
『だから、いつ家出娘が帰ってきてもいいように、琥珀が地盤整えて待っててあげな』
みっちょんも絵を描く人だから、本当によく聞く話だと知っているようで。
短期的に描けたり描けなかったりする人ならよく見かけるらしい。
そんなみっちょんからのアドバイスもあり、一応画材を買ったり使ったり、新しく切り絵を始めてみたり、アクセサリー制作をしてみたり。
手を出してはみるけれど、やっぱり気付けば手元に筆がある状態が一番安心してしまっていて。
漫画という新しいジャンルに手を付け始めた私は、最近専ら漫画のキャラクターを落描きし始めた。
ノートの端っこに描いたまま提出しちゃったけれど、怒られると思っていたのに花丸とハートを添えられて返ってきてしまった。
どうやら先生が、その描いたキャラのファンだったらしい。
やはり今は刀が流行っておるのだな。
「危ないところに行かせるのは反対したい気持ちもあるけど、少なくとも、アンタの近くにいおがいるなら大丈夫だと思ってる」
それは、二人の間のなかに、少なくとも信頼関係があるようで。
腐れ縁といっても、それだけ一緒の時間を過ごしてきたのだとわかる。
みっちょんのおかげで、またひとつ、いおりさんへの印象が変わった。