黒曜の戦場


その幸せが見えたなら、搔き集めて捕まえてみっちょんのお口の中に戻してあげられるのになぁ。



その時ふいに、ここと階段を繋ぐ扉が開かれて、みっちょんと私はそちらを振り向いた。

現れたのは今の今まで噂していた、咲くん。



「お待たせ。ちょっと移動してほしいんだけど、いいかな?」



じとりとしたみっちょんの視線にも慄く素振りを見せない、さすが黒曜のリーダーだ。



「そもそも黒曜の頭っていえば、笑顔を崩させたら殺されるっていう噂じゃない。代替わりでもしたばかりなの?それとも咲さんの上にまだいるわけ?」

「殺……?」



なんだその物騒な噂は???

階段に導かれて降りながら、みっちょんは咲くんにそう尋ねていた。



「うん?ここの頭は一年前から俺だよ」

「それじゃ、なんだかまるで咲さんの笑顔を崩したらヤバイって言われているようじゃない」

「うーん、そうだねぇ。まぁ本当に人を殺したことはないけれど」



一階、私たちが普段使っている部屋のすぐ真下の部屋の扉へと、咲くんが手をかける。

開かれた先には、まるで本屋さんのように棚に並ベラれている本がぎっしりと広がっていて、息を呑んだ。

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