黒曜の戦場
扉を開いたまま、咲くんが振り返る。
「不良の溜まり場の頭にいる人が、そんなに生易しい人間なはずもないよね?」
ニコリ、いつも通りの笑みなのに、その言葉は重くて。
グッと、緊張で胃の上部が締まるのを感じた。
咲くんはずっと穏やかな表情をしているのに、時々すごく怖く感じる瞬間がある。
ずっとではなく、一瞬顔を見せて、すぐに元に戻っている。
「どうぞ。書斎……というには小説や漫画ばかりだけれど。奥には画材を置いている部屋と、そっちにはベッドもあるよ」
「下の階にもベッドがあるの?」
「こっちはよくいおりの使っている部屋だから」
「不潔ね」
「……うん??」
みっちょんの言う『不潔』もよくわからない、綺麗なお部屋だけれど。
真ん中には木製テーブルと椅子が置いてあって、座って読めるようになっているみたいだ。
「大きなテレビもあるのね」
「それはゲーム用。未夜がよく使っているよ。俺もよくこの部屋で本を読んでいて、ここにあるものは大体もう読んだね」
「すごい……」
ジャンルごとに分けられているのか、背表紙で少年漫画や少女漫画、漫画の資料集などがすぐにわかる。
綺麗に整頓された部屋は、本当に本屋さんの漫画コーナーのようだ。