黒曜の戦場


「あそこの一角だけ、注意してほしいんだけど」



そう言ってそちらに向かっていく咲くんの背を追って向かおうとすると、背表紙の文字が見えて来た途中でみっちょんに腕を掴まれて止められる。

みっちょん……?



「ここから奥の棚、18禁だから。男性向け女性向け、BL、GL、TL、オトナとまぁ、いろいろ揃ってるんだ」

「……呪文?」

「ジャンルよ。まだ琥珀には早いわ」



ちょっと見えた限りでは、ペットとか、溺愛とか、縛……?なんて文字が見えた気がするけれど、すぐにみっちょんに引きはがされて、結局よく見えなかった。

けれど琥珀にとっては呪文のように想像も理解も出来ない言葉たちである。



「というか、女性向けまで揃ってる意味が解らないわ。他の女の子用?」

「絵の好みとか、話の構成やキャラの動きは、男女で好みが違うから。男性向けに偏らないで女性向けにも手を付けてるだけだよ」

「雑食……」



唖然とその一角を横目で見るみっちょんを置いて、私は少女漫画の方へと足を向けていた。
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