黒曜の戦場
描けなくても、画材に触れて使い方を覚えることは、私にとっての楽しみなことだ。
それは絵を完成させられるかとはまた、別なお話だから。
閉めた扉の向こう側は、相変わらずの賑わいを見せていて。
部屋の中とは全然違った空間になっていた。
「なんであんな所でぼっち飯してたのよあの灰髪眼鏡」
「まだそんな風に呼んでたのみっちょん?雨林さんだよ」
「名前は珍しいから覚えてるわよ。なんか琥珀のこと雑に扱いそうで心配なの」
「……大丈夫だよ、雨林さんなら。未夜くんも凄く懐いてるし………………モモテツ買ってたし!」
「モモテツ関係無さすぎて笑うんだけど」
そう鼻で笑うみっちょんだけれど、本当に心配してくれているんだと思う。
あの屋上での雨林さんの言葉を気にしているのかもしれない。
「あの、大丈夫でした?」
お皿にケーキを乗せてオロオロとこちらに向かってきた青髪くん。
「あ、あお──────青、ちん」
くん、を付けないで、そう呼んでみた。
私は、まだここの人達を怖がっていたんだと思う。
まだほとんど知らないから、失礼のないようにって気を張りすぎて。