黒曜の戦場


スッと視線を上げる咲くんは次に、コップを持って騒いでいる一角へと視線を移した。

机に腰を預けて笑っているいおりさんが、その中心にいる。



「いおりはピアス。黒いのあいてたでしょう?」

「あれ黒曜だったんですか」



確かに、左の軟骨あたりについてたピアスが黒かった記憶がある。

赤や金なども付いていて全体的に派手なので、馴染んでいたけれど。



「メンバーの全員が全員、黒曜石を身に付けているわけじゃない。下の子たちは付けたければ各自で買って付けていいし、付けなくても別に黒曜であることには変わりない」

「……私には、付けていてほしいって」

「そう。琥珀ちゃんには黒曜である印を付けて欲しかったから、買ってきちゃった」



てへ、なんて可愛く笑う咲くんに、ついこちらまでひくりと口角が上がってしまう。

そんな、コンビニ行ってきたみたいな気軽さで渡されましても……アクセサリーって安くはないでしょう……?



「俺から、初めてのプレゼント」



ブレスレットの付いた腕を咲くんの手が攫い、流れるようにその手首に口付けた。

ふにっとした柔らかい感触のした手首に、反射的に肩がビクリと跳ねる。

今見えたものは何?手首に?え、なに?



「て、え、ま……いま、え……??」

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