黒曜の戦場
そこへ後ろからドカドカと大股で近寄って来て、頭のすぐ横から原稿を覗き込むサラリとしたオレンジの髪が目に入る。
スウェット姿の彼はユルい。寝起きか?
「お前、線ガタッガタだな」
「口出すならアドバイスだけにして欲しいよ、いおりんりん!!!」
「「いおりんりん」」
うりんりんに、いおりんりん。Wリンリン?
パンダみたいでかわいいじゃないか。
うぅん、でも呼び方似てると呼びにくいなぁ……。
「お前ほんといおりさんに対してそんな……」
「気にしねぇけどメンタルマジで強いよなコイツ」
「てへぺろりんぬ!!」
琥珀は二人に向かって舌を出すと、呆れた顔を向けられてしまった。
世間が冷たいよぅ。
ふと伸ばされた手が定規を掴む。
すると、ここ数日共に苦しみを分かち合ってきた私の定規ちゃんが攫われて行ってしまった。
定規ないと線引く練習出来ないのにっ!!
「琥珀ちゃんのおじゃま虫をしに来たんですかっ!?」
「いや、定規がすり減ってんじゃねぇかと思って」
「…………ほぇ?」
ティッシュでキュキュッと拭き取られた定規のメモリ部分を、指先でツーっとなぞるいおりさん。
先の方汚れてるから、それじゃ手が汚れてしまうよ?
そして私の手はもうインクでまっくろけっけだ。洗いたい。