黒曜の戦場
「なぜアナログなんでしょうか……」
「雨林が機械音痴だからだよ」
「衝撃の事実をサラッと出しましたねっ!!?」
まさか、原因はリンくんだったのか。
いや確かにリンくんがいなくなったらあの戦場では回らなくなるだろうけれど。
パソコンで絵を描けるデジタルならば、背景もトーンも素材を駆使して、ペンも一本でほぼ消耗もせず、拡大縮小も自由自在の環境で描けるというのに。
デジタルのペン先も削れるという話は聞いた事あるし、デジタルデータが消えやすいデメリットもあるので、いい事ばかりとは言えないけれど。
「でも、琥珀ちゃんもアナログで絵描くでしょう?」
「う……私は筆の柔らかさを感じながら柔らかく色付けしていくのが好きなので……画面とにらめっこは苦手なの……」
紙の質感を手に、筆でなぞって真っ白なキャンバスに色付けしていく自由感。
実際に見る空の色、葉の色、季節の色、光や陰で変化する色味を感じ取って。
鳥のさえずりや風の音、水の音、自然環境音の中で伸び伸びと手を動かして……いつの間にか描き終えて、また次の紙に手を付ける。
そんな描き方が、好きだった。