黒曜の戦場
咲くんは本当に、お話作りが大好きみたいで、キラキラとした表情で話してくれている。
こうやって咲くんに積み重なったものが物語になって、漫画として形になって、みんなの元に届けられていくんだね。
「なんか……そんな人たちが集まって一生懸命つくる漫画の一部に自分も入ることになるのかと思うと、嬉しいけど怖くもなる」
そんなすごいところに、自分も入っていいのだろうか、とか。
特に黒曜は仲間意識が強いみたいだから、もし私が……指定された絵すら描けなくなってしまったら。
足元から崩れていくような恐怖感。
こんなに居心地がいいのに、切り捨てられてしまうんじゃないかという不安感。
「怖い?」
「……また急に、描けなくなってしまったり、しないかな」
張りつめていた糸が、はさみでプツンと簡単に切られてしまったように、自分の中にある絵に対しての想像力が、表現力が、解らなくなってしまった、あの時のように。
「怖いっていうことは、それだけ黒曜のことも好きになってくれたってことかな?」
横から、顔を下から覗き込まれるように近付く、咲くんの顔。
近付いたご尊顔にびっくりして、ひゅっと変な音が喉を鳴らしてしまった。
は、恥ずかしい!!!
「す、好き」
「…………」
「……あ、こ、黒曜が!私もう、みんなと離れたくなくて」