黒曜の戦場
でも、話した後には、どっとした疲れに襲われるんだ。
この正体が、琥珀にはちょっと、わからないけれど。
こんな気持ちになってしまう琥珀が、悪い子なのかもしれない。
机の上に広がっている真っ白な画用紙を眺める。
手を付けようとして、筆を持ったものの、やっぱり何を描きたいのかわからなくて、真っ白なまま。
居間でワンタンを食べていると、パパンがにこやかに話しかけてきた。
「美術部だって?大丈夫なのかい?」
なんの大丈夫なのか、わからないまま。
「うん!大丈夫、楽しいの!」
とりあえず『大丈夫』と言っておく。
心配かけると──また、たくさん聞かれるから。
「今度の土日もまた、みつちゃんの所で遊ぶの?」
「うん!みっちょんと一緒にいるの楽しいの!」
「でもみつちゃんも絵を描く子でしょう?琥珀ちゃん、大丈──」
「なーんにも、問題ないよ!!!」
ぱくぱく、ぱくぱく、ワンタンを食べていく。
ママンのごはんはおいしい。
ママンのごはんは美味しいのに、たまに味がわからなくなる。
ママンのごはんは好きなのに、早く部屋に戻りたいと思う。