黒曜の戦場


何を見せても、すごい、天才だと返ってくる。

上手、沢山描くのね、頑張って、応援してる。

子供の頃はそれで喜べていた。



欲が、出てきたのかな。

なにかが違うと感じ始めていたんだ。



琥珀は天才なんかじゃない、そんなことは学校で過ごしていればわかる。

琥珀は、頭は良くないけれど、みんなとそんなに大きな違いがないことはわかる。



ただ、みんなより早く絵を描くことに本気になって、楽しくてたくさんの絵を描いていた。

たくさん描いているうちに、たくさん色や質感に興味を持って、よりリアルに、より伸び伸びと描きたく思っていって。



琥珀は、絵を描く時に頑張っているつもりはないんだ。

ただ好きで、楽しくて──でも頑張りを求められてるのかなって。

筆に重みを増して感じるようになっていった。



表彰式が、だんだん怖くなっていった。

琥珀はみんなと変わらない歳なのに、頭もよくないのに、ただ人より少しだけ上手に描けた絵を、たくさんの大人に見てもらって。

だんだんと、その眼が怖く感じてくる。
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