黒曜の戦場


ねぇ、二人とも、琥珀が話しているはずなのに。

誰を、見てるの?



そこには、何がいるの?

琥珀らしさって何?

絵を描かなくなったら、琥珀じゃないの?

絵を描いていたから、琥珀は愛されていたの?

そしたら、お話をちゃんと聴いてくれた?

みっちょんはすごく優しくて強い子だって、信じてくれた……?





それから、その日は来た。

久しぶりに水彩絵の具を手にして、写真を見ながら描いてみたら、温度が感じられなくて。

琥珀の目が、変になっちゃってるのかと外の景色に視線を移しても、いつもと変わらない色が広がっていて。



色に温度だなんて、よくわからない感覚なのかもしれない。

色に気持ちや温度が付いていて、重ねて塗ると表情を変えていく、わくわくとした気持ちが今までならあった。

それがそっぽ向いたように、何度塗り重ねても笑いかけてはくれなくて。

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