黒曜の戦場
色が付いているのに、色を重ねているのに、色が……変わらない。
色の表情が、温度が、柔らかさも硬さも雰囲気も、全部全部全部……モノクロの写真のようで。
べちゃりと、筆を落としてしまう。
すごく、怖くなった。
一生の友達のような、仲間のような、私の一部だった感覚が……急に消えてしまったみたいで。
頭から、肩から腕から、スっと冷たさが、水をかけられたように急激に伝って、落ちていって。
吐き気がした。
頭を上げていられなくて、床に転がり込んで、額を床に押し付けて。
なんで、と、自分を責めたんだ。
倒れた音を聞きつけて部屋に来てくれたのはママン。
ベッドの上へと乗せてもらうと少し楽になって、頭が熱いのか冷たいのかもよくわからなくて、たぶん熱くて。
冷やした方がいいだろうと氷枕を頭の下に敷いたら、楽になっていた。
貧血かしら、とママンは心配しながら琥珀の顔を覗き込む。
「利き手は大丈夫?」「頭は打たなかった?」「痛いところはない?」「お腹が痛いの?」「吐きそう?」
朧気な意識の中で、途中まで答えていた気がするけれど。
そのあとすぐに、琥珀の意識は安心感と枕の気持ちよさの中に沈んでいった。