黒曜の戦場


「漫画って、一階の?」

「そ、そう」



じっと見詰める未夜くんの顔が、ゆっくりと離れていく。

ようやくまともに息が吐けた琥珀は、それからすぐに凶器(デザインカッター)の蓋を閉めた。

これを凶器にはしたくない。



「……トーン削りのテキストにしただけで、漫画の内容ちゃんと読んだことない」

「……そうなの?」

「そう。少年漫画にも影や服にトーンを使う人はいるけど、ペンテクや背景で画面埋めちゃう人も多いから、少女漫画の方が使ってるトーンの種類とか組み合わせが多い」

「そんな所を見てたのか」



未夜くんもすごく漫画の観察をしているんだなぁと、ここで知る。

たしかに、トーンって漫画でしか見たことないから、使い方の幅を広げるには漫画を読むしかないんだね。



「あとは、いおりに教えてもらったり」

「いおくんマジでなんでも出来るのね」

「たまに他の作家さんの所にも手伝いに行ってるらしいよ」

「マジか」



既に漫画家さんである上にアシスタントさんにまでなってきているのか。

同じ学校にいたんだから、琥珀とも同じ高校生よね?

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