黒曜の戦場


琥珀は胸の奥がムズムズきゅるるんと悲鳴を上げて、顔面を机にゴチンと伏せた。

いてて、鼻潰れちゃう。



ペラリ、静かな空間にページをめくる音が響く。

琥珀は瀕死でページをめくる手を止めているから、琥珀が鳴らした音ではない。



「なんでこいつら、水族館や遊園地行くたびに女の取り合いしてんの。静かに見て回れないの?」

「……そこは女の子の願望シチュエーションだからじゃないかなぁ」



冷めた瞳で漫画を読んでいるのは、提案者の未夜くん。

琥珀はこんなにきゅるんきゅるんしちゃうのに、未夜くんはしないのかなぁ。

……あぁでも主人公が大体女の子だから男の子は感情移入できないのかもなぁ。



「ダメだ、合わない。琥珀のオススメの漫画ある?」

「なまいきざかり?」

「なまいき……?」



一応、みっちょんに言われてからいくつか少女漫画を漁っていたんだ。

「きみとど」で友情と柔らかい愛情をほわほわと学んだ私は、「お女やん」という真っピンクなコミックスで女子向けネット小説サイトにハマり(不良モノ)、それから今、「なまいき」にハマっている。

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