黒曜の戦場
「このままじゃ咲さんたちが可哀想だからよ。もちろん琥珀の為でもあるけど」
「なん、ですと」
「少しはドキドキやキュンキュンを疑似体験して覚えておきなさい」
つん、と、制服の胸元のリボンをつつかれる。
琥珀はセーラー服にカーディガンを着ている。
みっちょんとお揃いで紺色のカーデなの。いいでしょ?
その胸元に手を当てて、琥珀はまた考える。
「ドキドキ、キュンキュン……?」
それがわからなくちゃ、咲くんたちが、可哀想……?
でも最近、なんか胸の奥がもぞもぞって震えることがある。
あれとはまた違うのかな?琥珀あれくすぐったくて。
でも、嫌ではないんだ。
「みっちょん」
「なに?あんたそろそろ迎えくるから話し込んでる暇ない──」
「みっちょんの、たいぷは……?」
「…………………………は?」
それは、みっちょんからしたら唐突に降ってきた疑問だったのかもしれない。
目を見開いて、全く想定していなかったというようにぽかんと口を開けて固まってしまった。
「…………み、みっちょ、」
「タイプ?」
「あ、はい」
「私の?なんで?」
「えと……琥珀のタイプを聞かれたんだけど、タイプって言われても、ちょっとまだよくわからなくて」
「……あぁ、琥珀がタイプに疎いから私に聞いたってこと?」