黒曜の戦場
「咲さーん、ノックなんていいってぇ。美術部一同一緒にいたんだからぁー」
「うん、でも中に二人いたでしょう?」
「ミツハミツハー!描けたぁー?おー!!マジ神。うっつくし」
「えーまってウチも見たーい!はぅ……拝んどくわ」
「咲くんほんとにもう描かせてくれないのー?」
「ごめんね。俺、琥珀ちゃん迎えに来ただけだから」
「えー……この子、」
「うん?」
美術部の子達に一人一人視線を向ける咲くんの顔は、こちらからは見えなくて。
でも、なぜかみんな口を噤んだと思ったら目を逸らして、何も無かったように美術室の中に入って来た。
……今の一瞬でなにかあったの?
「ミツハー、王子貸してくれてありがとーっ」
「夕焼け空と逆光王子、ヤバかったわ。尊い」
「いや、私がその王子から琥珀のこと借りたんだからね、貸したのは私じゃないのよ」
「……そーだね」
「琥珀と仲良くなった方が、今後王子も一緒に来てくれるかもよ?」
琥珀は、美術部さんたちとはあまり会ったことがない。
琥珀は美術が好き。
けれど描くことが好きで、仲間とわちゃわちゃする気はなくて、今までは放課後直帰コースだった。
美術部に誘われても断ってしまうから、美術部さんたちにとってはいい印象を持たれていないかもしれない。
「琥珀ちゃん」