黒曜の戦場
ゆるりゆるり、美術部員さんたちとの話を終えた咲くんが、琥珀の元へと来る。
みっちょんも咲くんがこちらに来るのを確認すると、琥珀の背中をぽんと押してくれた。
「行こうか」
ふわりと頭の上に乗せられる手に、柔らかくぽんぽんと撫でられる。
子供をあやす様な感覚なのかな、咲くんにとっては。
差し出される右手に、思わず反射的に手を伸ばしていた。
それが自然かのように、慣れているかのように。
コンマ一秒、気づいた時にはもう、その手を引かれて歩き出す。
つい、お母さんに手を差し伸べられた時のように、自然と繋いでしまっていた。
…………あれ、咲くんと手繋いだこと、あったっけ。
「こはくーっ」
ドアの前、みっちょんに呼ばれて振り返ると、咲くんも足を止めてくれて、みっちょんの言葉を待ってくれていた。
「フラワーガーデンがいい」
「っへ……?」
「デートの場所。アイツらに似合わなそうだから」
ニヤリ、笑うみっちょんの瞳は、私ではなく、咲くんに向けられているようで。
琥珀に話しているのに、咲くんを見上げて、可愛らしく首を傾げる。
「いつまでも動かないなら、琥珀取られちゃうわよ?」