黒曜の戦場


すり、と彼の親指が重なる手を撫でて、妙な緊張が生まれた。

あれ、なんか……おかしいと思っているのは琥珀の方だけなんだろうか。



「つなぐ、の?」



さらに混乱してきた琥珀は、なんとも言えない問いを言葉に出してしまう。

あれ、でも……繋ぐのってダメなことなんだっけ?

ダメではない、嫌でもない、けれど。



ふふっと咲くんが笑うと、キュッと握られてからその手が離れていった。

あ……。



「うちの女神さまを連れ出すのに必死になってました」

「……絶対うそだぁ」



必死なんて顔、咲くんからは少しも感じられない。

琥珀、からかわれてたのかな?

それともお友達……いや、仲間?としてのスキンシップみたいな?ことなのかな。



繋いでいた手に、熱が残っている。

咲くんはいおくんほど背も大きくはないとは思っていたけれど……咲くんのおてて、大きかったな。



「琥珀ちゃんて、すぐ連れ去られちゃいそう」

「……むっ!」

「だから俺が繋ぎ止めておかないと」



別に琥珀はどこにも行っちゃったりしないのに、咲くんはそんなことを言う。

そう言って優しく笑って、琥珀の中の何かをいつも満たしていくんだ。

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