黒曜の戦場
速やかに拾って返してくれたと思ったら、もう遠くの彼方へと消えていっていた彼。
呆然としちゃって、ありがとうも言えない素早さだった。
ありがとう、見知らぬ不審者の人。
この中身を見られていたら、私はとても恥ずかしかったことだろう。
先程の見たものは何だったのだ???
すると、ようやく私に気付いてくれた未夜くんがこちらを向いたので、琥珀は手をヒラヒラと振りながら未夜くんの元へと近付いた。
小首を傾げて微笑んで手を振り返してくれる未夜くんに、なんだかきゅんきゅんする。かわいい。
今日もまた萌え袖がいつも通りかわいい。
これが胸きゅんというやつか。
「ごめん琥珀、置いてけぼりにしちゃって。葉の削りって難しく考えちゃって、逆光での葉っぱ、ずっと見ていられる」
「……トーン削りのことずっと考えてたの!!?」
未夜くんは上を見上げてずっとトーンのイメージをしていたご様子。
それはきっと職業病というやつじゃないかなぁ……。