黒曜の戦場
「咲と出会った頃……夜、雨林に連れられて黒曜の倉庫に入ったんだけど、その頃は本当に何も話せなくて、ひたすらずっと怖くて」
「……」
「最初に話しかけてくれたのが咲だった」
初めて聞く、未夜くん自身のお話だった。
「琥珀は、家族が怖いと思ったことはある?」
「……どうだろう、琥珀のおうちは…………、優しすぎるからなぁ……」
「優しすぎる?」
「琥珀、ちっちゃい頃ちょっと体が弱かったの」
だから、だから琥珀も、未夜くんに。
少しだけ、おかえしに。
「だからちょっと、その名残で」
「過保護?」
「うーん、でもパパもママも、琥珀は好きなの」
琥珀はちょっとだけ、他の人より体調を崩しやすくて。
でもお絵描きが好きだったから、できる限り色んな景色をって、車で連れて行ってくれて。
体の調子が悪い時はずっと付き添っててくれて。
お勉強についていくのも、ちょっと大変だったなぁ。
「未夜くんは、家族が……その、怖いから、黒曜に来たの?」
聞いていいのか、少し悩んだ。
琥珀は人と関わる時間が足りていないから、そういう気遣いみたいな所が欠けてしまっている。
だから、踏み込んでいいのかダメなのか、境目が曖昧で。
でも。
「うちの家族は、ずっと俺を責めてくるから」
未夜くんは、話してくれた。