黒曜の戦場


少しかがんだ咲くんが、琥珀を覗き込む、車の中でもよくあるいつものシチュエーションで。



「こ、こ、こ、」

「うん?」

「琥珀は少々寝ます!!!」



私は逃げ出した。



「……え」

「お、おつかれさまですっ」



今咲くんをちゃんと見て話せる気がしないっ!!



キュッと目を瞑り、琥珀はひつじさんを数える。

ひつじさんがいっぴきー、ひつじさんがにひきー、ひつじさんがさん──そこまで数えると、ふと咲くんのいる反対側の側頭部にふわりと触れられる感触があると、直後に琥珀は引き寄せられていた。



トンッと当たったのは、咲くんの肩。

思ったよりしっかりしている、咲くんの──。



「もたれかかってていいよ」

「…………」



咲くんの三角筋。



琥珀はガチガチに固まったのでした。

ひぇ。

今日はなんでだか何しても咲くんが甘い、砂糖吐きそうです。

それにしても細く見えて意外と筋肉あるのねっ!!?



落ち着くのよ琥珀、咲くんは善意で琥珀に枕として自分を差し出してくれているのよっ!!ひっひっふ!!

その善意を蹴る訳にも行かず──というか驚いたのは最初だけだった。
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